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郡上おどりを支える人々

郡上おどり 日本一踊り明かす街

「輪」=「和」を大切に
郡上の宝、国の宝を大切に守りつつ
楽しむ踊りを継承していく

郡上おどり保存会 会長 藤田政光さん

2か月にわたる郡上おどりを支えているのが、「郡上おどり保存会」の会員たちです。約30夜以上、おどり屋形に上って唄い、太鼓・三味線・笛などのお囃子で踊りを盛り上げ、調子を整え、一方で踊り子たちは輪に入って正しく美しい踊りを先導していきます。会長・藤田政光さんは父の代から保存会に関わり、母のお腹の中で郡上おどりのお囃子を聞き、歩くより先に調子を覚え、踊りを覚えてきたという生粋の郡上生まれ・郡上育ち。

「保存会ができたのは大正11年(1922年)のこと。地元の有志が集まり5~6名からスタートした保存会会員は、現在60名ほど在籍しています。 先祖代々受け継いできた郡上魂ともいえる郡上おどりを、守り、後世へ伝えていかなければならないという責任をそれぞれが持ち、小学校やジュニアクラブで子どもたちに踊りやお囃子を指導しています。 郡上おどり同様、誰でも輪に入れる=和を大切に、おかげさまの精神で未来へ伝えていきたい。それが保存会としての想いです。昔は、三味線は地元の芸者さんが弾いていましたが、少しずつ芸者さんが減ってきて危機感を感じ、確実に継承していくために民謡のプロから三味線・唄いを習った時期もありました」。

「郡上おどりは毎年来てくれる人も多く、お囃子の調子が少しでも乱れるとヤジが上がります。もちろん、それがきっかけで盛り上がることもあるのですが、気を抜けません。 みなさんに楽しんで踊っていただくために、会員たちはお稽古を重ねています。郡上おどりのシーズン前だけでなく、毎月5~6回お稽古をしているのは、技の向上に加えて、ロングランを乗り切るためのチームワークを育み、心をひとつにするという意味もあるんです。 郡上おどりに初めて参加する人も、手足を動かしているうちに踊れるようになるので、安心して楽しんで参加してくださいね。一番大切なのは、にこやかに、楽しんで踊ることなのです」。

郡上おどりの冊子
郡上八幡旧庁舎記念館 
お土産コーナーにて購入可能

踊り子さんが楽しんで踊れるように
魂を込めて唄っています

郡上おどり保存会 唄い手・後藤直弘さん

完璧に唄うことが難しいと言われる「郡上おどり」全10曲を唄うことができる稀有な存在の後藤さん。

「保存会に入ったきっかけは、お囃子方の先輩に誘われたからなんです。それが57年前のこと。民謡を習っていたわけでなはなく、最初は見よう見まねでしたが、やればやるほど奥が深くて、個人的に長唄を習いに行ったり、東北や北海道の民謡を習ったりして、発声やこぶし・うら声の出し方を研究してきました」。

「郡上おどりは毎年のように他県から来られる方も多く、耳が肥えているので生半可なお囃子では満足してもらえません(笑)。踊り手さん、聞いてくれる人へ失礼にならないよう、気持ちを入れて唄っています。お囃子と踊り子さんの手拍子・下駄の音がピタッと合う瞬間があります。何千人もの人がいるとは思えない一体感が、おどりファンにはたまらないようです。私が一番好きなのは『まつさか』です。空が白々してきた頃に唄うこの曲は、徹夜おどりのクライマックス1回のみ。これを踊らないと、踊り明かしたことにはなりません。この曲は、アドリブで歌詞を入れて唄える唯一の曲なのです。「今日はよう踊ってくれた。また来いよ。そして一緒に踊ろう」。その時々の想いを託し、魂を込めて唄っています。泣いてくれる人もいますし、中には『まつさか』を聞くためだけに来る方もみえます。加減な気持ちでは唄えませんよね。より多くの人に楽しんでもらうために、これからも極めるための努力をし続けていきたいと思っています」。

また、後藤さんは、地元の子どもたちにも郡上おどりの楽しさを知ってほしい。そして、技や心を受け継ぐ存在になれば…という想いから、個人的に郡上節を教える試みもされています。さらに、生涯学習の一環としてお囃子クラブを結成して大人たち向けに教えるなど、精力的に活動中。

「他県のみなさんが毎年楽しみに郡上おどりに参加してくれて、本当に感謝しています。また、地元の人たちにも故郷の大切さ・郡上人魂としての自信を思い出す場所として、楽しんで参加してもらいたいと思っています」。

郡上節を唄う会「古調かわさき」編