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FOR NEXT 100 YEARS 生ごみの堆肥化!「完熟堆肥」プロジェクト

「100年先も郡上に遊べる川と雪山を残す為に。」をテーマに掲げ、2022年から取り組んでいる新プロジェクト『FOR NEXT 100 YEARS』。
今回はプロジェクトの一環として、10月22日〜23日に開催されたアウトドアイベント「GUJO OUTDOOR WEEK 2022」の収益の一部を活用し、セントラル会場内・キャンプエリア内の生ごみ23kgを堆肥化しました。

完熟堆肥づくりについて

一般社団法人 長良川カンパニーでは、この源流域の豊かな川を次世代につなぐため、2021年から「完熟堆肥づくりプロジェクト」をはじめました。

循環型の社会づくりについてネパール政府などにも指導を行っている、コンポストアドバイザーの鴨志田 純 氏監修のもと、郡上市大和町を中心に19世帯3事業者が連携し完熟堆肥づくりを行っています。

一般社団法人 長良川カンパニー

完熟堆肥事業を推進する一般社団法人。
2020年に設立し、源流域の風土をいかした企業研修やオーダーメイドの個人向けの旅のコーディネート事業を手がける。また「源流で遊び、源流を守る」をコンセプトに、産学官連携で川の環境保全のための共同研究事業なども行っており、完熟堆肥づくりもその一環で取り組んでいる。

鴨志田 純 氏

鴨志田農園園主。コンポストアドバイザー。
ネパールのカトマンズ州ティミ市を中心に生ごみ堆肥化と有機農業のシステムづくりを行う。
一般社団法人日本オーガニックフラワー協会理事。一般財団法人つちのと理事。

【完熟堆肥について詳しく知る】鴨志田純氏

長良川カンパニーで取り組んでいる完熟堆肥づくりの特徴は、生ごみを微生物の力で効率的に分解・発酵・熟成させることにより、安全で高品質な堆肥をつくっていることです。近年、世界的に化成肥料の価格が高騰する中で、身近な資源を活用してつくることができる完熟堆肥の取り組みはますます注目が高まっています。

完熟堆肥をつくる上で重要なのが、窒素資材、炭素資材、微生物資材、ミネラル資材を配合するCNBM分類と呼ばれる資材の配合割合です。この仕組みは農林水産省が定める「農業技術の匠」に認定された橋本力男氏が体系立てたもので、有機物を分解する微生物の活動を支え、60℃以上で高温発酵する特徴があります。これにより、病原菌や雑草の種子が死滅し、安心安全な堆肥が完成します。

長良川カンパニーの活動ではこれまでに3,000リットル以上の完熟堆肥が完成し、完熟堆肥を活用した野菜づくりの実験も行われています。

『GUJO OUTDOOR WEEK 2022』への出展

展示会場の様子

GUJO OUTDOOR WEEK 2022では、セントラル会場とキャンプエリアから処分された生ごみ23kgが堆肥化されました。通常の焼却処理時であれば助燃剤が約18Lも必要とされ、コスト削減につながりました。

完熟堆肥づくりについて紹介する様子

当日の様子、展示内容
 ・キエーロ(大規模生ごみ処理ボックス)
 ・家庭用コンポスト(生ごみ処理ボックス)
 ・完熟堆肥、窒素資材、炭素資材、微生物資材、ミネラル資材
 ・展示パネル

展示ブースではキエーロを設置し、生ごみと床材(とこざい)を合わせる「一次処理」が行われ、生ごみを減量する様子を見て学ぶことができました。

※床材とはCNBM分類という堆肥づくりの技術で発酵した資材のことで、微生物が生ごみを分解する活動を助けます。

廃棄される生ごみを堆肥化

他にも、床材のつくり方や家庭の一次処理方法、食と農と生ごみの循環について展示パネルで説明し、実際の資材も展示していたため、多くの参加者が足を止めて資材に触れたり、堆肥づくりについて質問する姿が印象的でした。環境保護を掲げる本イベントの参加者の中には「コンポストを実践している」「自宅でやってみたい!」といった声も見受けられました。

京都音楽博覧会2022」など、全国でもイベントで廃棄される生ごみの処理について考える動きが始まっています。

長良川カンパニーでは、今回の出展をきっかけにhamon マルシェ(明宝地域)や石徹白文化祭(白鳥地域)など他イベントへの出展が決まりました。今後は、生ごみを含めたゴミ処理問題やゴミを出さないイベントの仕組みが確立され、郡上内外の多くのイベントで生ゴミの処理が実践されることを願います。

生ごみ処理と環境課題

皆さんは可燃ゴミ袋の中にどの程度の生ごみが含まれているか気にしたことはありますか?

可燃ゴミのうち、生ごみは約40%を占めています。

生ごみは水分と栄養分が多いため、

①ゴミ焼却場で燃えにくい
②腐りやすい(病原菌や雑草の種子の繁殖、悪臭、虫の発生などにつながる)

といった、特徴があります。

生ごみを含む多くのゴミを焼却処理する日本では助燃剤(重油や灯油)を使用し、ゴミを焼却処理しています。その助燃剤コストは年間約6,000億円ともいわれ、私たちの税金で賄われています。この40%の生ごみが堆肥化されることで家庭ゴミの削減や焼却コストの削減につながります。

また、腐りやすい生ごみコンポストは悪臭や虫が発生しやすく、取り組みが難しいという声が多くあります。

完熟堆肥コミュニティでの「床材づくり」の様子

完熟堆肥づくりでは、生ごみの管理を徹底し腐敗させずに分解することで堆肥をつくります。大量の生ごみを高温発酵させることで成分が安定し、農業で使いやすい堆肥が完成します。また、病原菌や雑草の種子を死滅させ安心安全な有機堆肥となります。

成分が雨などに溶けやすい化学肥料や農薬と異なり、粘性の高い壁土が含まれる完熟堆肥は栄養が土に残りやすく野菜づくりに適した土壌環境を維持することに役立ちます。化学肥料や農薬の課題である「過剰な栄養状態」や「偏った栄養状態」の土壌で発生しやすい野菜の病気や、肥料や農薬が河川に流入することで発生する赤潮などの問題を防ぐなど、完熟堆肥は農業と環境の両面にメリットがあります。

完熟堆肥について

イベント3ヶ月後、微生物の力で高温発酵する様子。

上記で述べたように、
CNBM分類に基づき60℃以上で1ヶ月以上高温発酵させ、安全性が高い完熟堆肥は、

・病原菌や雑草の種子を死滅させ、生ごみを安全に快適に処分することができる
・高品質で野菜づくりで使いやすい

といったメリットがあり、環境課題の解決やおいしい野菜づくり、家庭ゴミの減少などの「無理のない」循環社会を実現することができます。農家様や解体業者様、施設や機材をご提供していただく地域の方、活動に取り組むメンバーや飲食事業者様のご協力により、完熟堆肥づくりの活動が成り立っており、これまで活用されていなかった資材に新たな価値がうまれ、地域課題の解決に繋がっています。

長良川カンパニーでは、今後より多くの方が参加できるようにワークショップ開催やイベント出展、情報発信をしていく予定です。この長良川の源流域から完熟堆肥づくりを実践する仲間が増えることを願っています。

展示パネル①

完熟堆肥プロジェクト企画運営:一般社団法人 長良川カンパニー


郡上の未来へ繋げるアクション
「FOR NEXT 100 YEARS」

「100年後も郡上に遊べる川と雪山を残すために」というテーマを掲げ、自分たちの孫やその先の世代に、自分たちが楽しんだのと同じく、もしくはそれ以上にこの郡上というフィールドで遊んでもらいたいと考えそれを実現するためのアクションを様々な形で実施していきます。

全ては #100年先も郡上に遊べる川と雪山を残す為に。


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